「豊頃町を盛り上げたい!」と集まった町民たち

豊頃町に暮らす若者たちで町を盛り上げていこうと、2016年に活動をスタートさせた「豊頃団志」。メンバーは老若男女問わず、さまざまな職種の人たちから構成されています。

農業組合・漁業組合・商工会の3つの異なる団体とつながり合い、ときに町民からの協力も得ながら、移住モニターツアーや特産品のPR、冬のお祭りの復活など、地域のためになる面白い活動を行っています。

今回は、その中のコアメンバー5人に、団志に入ったきっかけから、現在の活動、これからの目標についてお話をお聞きしました。

川口 舞さん
畑作農家
川口 知紘さん
畑作農家
鈴木 健司さん
酪農家
遠藤 亘さん
畑作農家
鎌本 真理さん
元地域づくり推進員
(2017年9月〜2019年9月)

「豊頃団志」に入ったきっかけは?

川口 知紘さん

僕は2016年の発足時から所属しています。最初は特に考えなしに何となく入りましたね(笑)。でも、町で採れた野菜をPRするために東京へ行ったり、メンバーとお酒を飲みながら今後豊頃をどんな町にしていきたいかっていう話をしていくうちに、町の将来について真剣に考えるようになって。そうこうしているうちに、今まで続いています。

鎌本 真理さん

私はちょうど団志が東京へ町のPRに訪れていた際に、お客さんとしてそのイベントに参加し豊頃町を知りました。その時に食べた豊頃産野菜のあまりのおいしさに感動したんです。その年の冬に開催された移住モニターツアーに参加し、翌年の夏ごろには移住をしてしまいました。同時に、活動にも参加するようになりました。

川口 舞さん

私はそんな真理さんがきっかけです。「団志に入って、一緒に楽しいことをしよう」と言ってくれて。それから会議に参加するようになって、気づいたらいつの間にかメンバーになっていました。

遠藤 亘さん

僕はここにいるメンバーよりも少し遅めの参加なんです。元々団志の存在は知っていたんですけど、当時は子どもが生まれたばかりで、忙しくて目を向けられませんでした。でもある日、「カッチコチ祭り」の計画を知って。素晴らしい活動だと思い、混ぜてもらうことにしました。

鈴木 健司さん

僕は2016年発足当時、農協青年部の部長を務めていたこともあって、役場の方から声を掛けてもらったのがはじまりです。同じように事業を営む者同士、接点をもつことも必要だと思い、参加しました。

「豊頃団志」の特徴的な活動「カッチコチ祭り」について教えてください!

カッチコチ祭り

以前、町で行われていた「ほっかほか祭り」を復活させるかたちで、2019年2月に初めて開催された「カッチコチ祭り」。主役は子ども。カプセルを雪の中に埋めて宝さがしをしたり、スノーフラッグで雪の中に飛び込んだり、はたまたスノーモービルで雪原を駆けたり、盛りだくさんの内容のお祭りです。

川口 知紘さん

子どもの頃、毎年冬にお祭りがあったんです。河川敷でそりすべりをしたり。そういう、子どもの頃の楽しかった思い出って意外と覚えているものなんですよね。今の子どもたちにも町内で良い思い出を作ってあげたくて。「カッチコチ祭り」として復活させようということになりました。

鎌本 真理さん

他にも、以前移住モニターツアーで町外の方へ向けて冬のアクティビティを体験できるイベントを開催した時に、どうせなら町内の人たちにも楽しんでもらおうと企画したことがありました。ツアー自体の参加者は5人だったのに、協力してくれた町内の方々やお子さんたちがたくさん集まってくれて、結局50人規模のイベントになったんです。あの時、楽しいと感じてくれた人がいたからこそ、こうやって今まで繋がってきたのだと思います。

川口 知紘さん

そうそう。子どもたちが楽しんでいる姿を見たら、来年もやらなきゃなっていう気持ちになるんです。

遠藤 亘さん

このイベントを通して、この町で育つ子どもたちが地元に愛着を持ってもらえたらうれしいですね。

遠藤 亘さん。畑作農家を営む子煩悩なお父さんです。

トヨコロッケ

豊頃産の素材を使った名産品を作ろうと始まった「トヨコロッケ」づくりプロジェクト。何度も試作を重ね、豊頃産チーズと大津産鮭ラー油の2種類を開発中! 東京在住の鎌本さんも試作品を送ってもらい試食し、意見交換に参加しています。

川口 舞さん

はじめはコロッケ以外にも、鹿肉バーガーとか、いろいろな案が出ました。でも、最終的に身近で素材が手に入りやすいジャガイモをメインに使ったメニューにしようと、コロッケに落ち着きました。

川口 知紘さん

試作第1号は地域研修の一環で訪れていた北海学園の学生さんに食べてもらったんです。そうしたら、『あれ。これあんまりおいしくないぞ』ってなって(笑)。

川口 舞さん

そうだったね。『生臭い匂いが気になる』や『鮭自体の味が薄い』とか、辛口のコメントもちらほら…。地元の商店街や飲食店の方にも試食してもらって、アドバイスをいただきながら試作をしました。

遠藤 亘さん

コロッケって、意外と調理が難しいんです…。何度か試作を重ねて、最近やっとおいしくなってきたのではないかなと思っています。

鎌本 真理さん

送ってくれたコロッケ、おいしかったよ! 完成が楽しみだね!

鎌本 真理さん。2017~2019年まで豊頃町で地域づくり推進員として活動。現在は東京で治験コーディネーターとして働いています。豊頃団志の活動には東京から遠隔で積極的に参加しています。

これまでの活動で印象深いエピソードはありますか?

鎌本 真理さん

豊頃団志が動きはじめてすぐの頃、始まったばかりでみんな緊張していたからか、正直ちょっとだけ怖かったのを覚えています。最初はビクビクしていました(笑)。

鈴木 健司さん

そんな感じだったっけ?(笑)

鎌本 真理さん

農家や酪農家、町職員など、それぞれの視点からの意見があるから、真剣な議論になったり、言い合いになることも最初は多かった記憶がありあります。でも、時間の経過とともに、お互いの立場や思いが伝わっていって、さらに仲が良くなっていったと思います。今ではより前向きな議論ができるようになっていますね。

(左)川口 舞さん、(右)知紘さん。夫婦で豊頃団志の活動に参加しています。
川口 知紘さん

役場の人と意見を交わす機会は今まで多くなかったけど、町のことを真剣に考えているんだなと改めて気付きましたね。物販のことなど、教えてもらうことも多いですし。豊頃団志に入らなかったら関わらなかったであろう人たちとも繋がることができたし、自然と知り合いも増えて、活動していてよかったと思います。

今後の目標や、やりたいことを教えてください。

川口 知紘さん

豊頃に住んでいる僕たちが当たり前だと思っていること、例えばだだっ広い畑とか、あたり一面の雪景色とか。そういうことって、他の地域で暮らす人たちにとっては特別に感じることもあると思うんです。僕たちにとっては当たり前のことも、他の人からすれば貴重な体験。そんな環境で暮らしていることの素晴らしさやありがたさを子どもたちに伝えていきたいと思っています。

遠藤 亘さん

僕はカッチコッチ祭りを冬の定番の行事にしたい。「冬と言えばカッチコッチ祭りだよね」っていう認識が広まるような。そのために、まずは継続するイベントにすることが目標です。

鈴木 健司さん

個人的に、豊頃では今後さらに新しい特産品を生み出す必要があるなと感じています。そういう面で、トヨコロッケの活動は町全体に明るい兆しを与えているように思います。その流れがひとつのきっかけになって、個人としても何か新しいことができるのではと思ってくれる人が増えたらうれしいですよね。僕自身、酪農だけでなくソフトクリームなどの加工品にも挑戦していきたいと考えています。

鈴木 健司さん。冷静に物事を判断し行動に移す頭脳派です。
遠藤 亘さん

僕も、トヨコロッケを作るうちに個人でも何かできるのではと考えるようになって、畑で採れたジャガイモを揚げてフライドポテトを作ってみたんです。昨年の夏に、ポテト用のジャガイモを育ててみたので、今後はそれをイベント等で提供できるようになれたら良いなと思います。コロッケよりも簡単にできて、子どものウケも良いんですよ。

鎌本 真理さん

団志の活動の目的って、3つくらいあるのかなってずっと考えているんです。

一つ目は、地域の人たちとの合意形成。いろいろな職種が集まって、いろいろな考えがある中で、意見や方向性をまとめていく力をつける場だと思っています。

二つ目は、カッチコチ祭りの復活やトヨコロッケの開発など、新しいことにチャレンジすること。

そして三つ目は、子どもたちの郷土愛を育てる場。この「豊頃団志」の活動も継続していくからこそ、子どもたちの記憶にちゃんと残っていく活動になると思っています。

2016年から始まった活動がここまで続いているのは、メンバーそれぞれの「~したい」「~しよう」という意志の強さでした。メンバーの「やりたい!」という気持ちが重なり、やがて大きな力となって、町を盛り上げていく。小さな町で起こった挑戦は力強く続いていきます。