2021年春に就任した按田武町長。総務課、企画課時代の経験を活かして、第5次まちづくり計画を推進します。具体的な施策について聞いてみました。

按田武町長 プロフィール

1967年 豊頃町生まれ
酪農学園大学出身
1990年 豊頃町役場に入庁
2020年 企画課長を経て2021年から豊頃町長就任。

豊頃町役場に入庁してから、町長に就任されるまで

私の実家は豊頃で農業を営んでいて、大学進学をきっかけに町を出ました。兄がおり、後継ぎの期待もされていなかったので、札幌で就職するものだと思っていたところ、「町で職員を募集しているから受けてみないか」と声をかけていただいたのが縁で入庁しました。

最初は畜産課に配属になり黒毛和牛を導入する新規事業に関わりました。一番若手で力もあったので、よく牛を引っ張って車に乗せる役割をしていましたね。当時畑作中心だった町の農家40戸ほどに和牛を導入いただいて、現在でも20戸ほどが継続されています。あのとき私が車に乗せた牛たちの子孫が、現在の畜産業の一旦となり支えてくれている事を思うと、感慨深いものがあります。

また、下水道係に異動した時は新しい下水処理場の供用開始のタイミングであったり、企画商工課では大津のコミュニティセンターや役場隣接のえる夢館など大きな建設の担当をしました。カナダ・サマーランドとの姉妹都市締結5周年事業も印象深いです。現地の人々や文化に直接触れて刺激をもらい、町民のみなさんにもぜひ経験してもらいたいという想いから、豊頃に帰ってきてから仲間と共に、交流を促進する会を立ち上げ、事務局を担当しました。

配属される先々で町の新たなチャレンジに携わることができ、0から1を作り出し、1から10へと大きく育てる仕事にやりがいを感じました。この経験を通じて、バイタリティを高められたのではないかと思っています。

町長になったきっかけは、長年務められた宮口前町長が勇退を発表された時に、「やってみないか」と周囲の方々に言っていただいたことですね。当時、課長職の中でも若手でまだまだ勉強中の身ではあったのですが、これまで業務に従事してきたなかでの私の機動力というかガッツを見込んで推して下さったので、応えたいと思い決断しました。幸い宮口前町長が作ってくださった基盤があるので、その上で心おきなく新しい挑戦をさせていただいています。

2002年に完成したえる夢館。
カナダ・サマーランドとの交流の様子。2008年からは隔年で中学生を派遣しています。

人口減少に歯止めを。子育て施策の充実

地方の町における人口減少は大変大きな問題で、豊頃町も類に漏れません。しかし2018年には十勝では数少ない転入超過を記録するなど、急激な減少は抑えられています。これは定住化・子育て支援施策に尽力してきた成果だと思います。

定住促進施策では、町内での新築・中古住宅購入時の補助や、町外への通勤者に対する補助という特徴的な施策も行っていて、今期は年齢制限を30歳から60歳に拡大。利用者は年々増えています。

子育てについては、出産祝金や、1~6歳の誕生日には毎年10万円の支給、町内の保育所への通所で月額5,000円支給、高校生まで医療費無料などと、特に注力しています。私自身も子をもつ親ですから、子育てにお金がかかる事は身をもって知っています。子どもたちは未来を支える宝です。親御さんが安心して子育てできる環境のための施策は、これからもずっと続けていきたいと考えています。

新型コロナ感染症対策など、医療関係の対策

着任後すぐに取り組んだのが、町立病院の医師確保でした。安定して医師を確保するため、民間への指定管理方式に転換し、おかげで2021年4月からは常勤の医師も着任しました。多くの町民が必要とする医療体制を守るために奔走した半年間でした。

1回目のコロナワクチン接種の際には、町内に病院が少ないため担い手が不足。帯広など町外の医師や歯科医師、看護師に呼びかけ、ワクチンの打ち手を募集しました。無事9月には対象者の8割以上が接種を完了しました。

さらに、国の子育て世帯への臨時特別給付金においては、豊頃町独自で所得制限の撤廃を決め、十勝では最も早く給付を行いました。先にも話したように、子どもは町の宝です。全員一律以外の選択肢は浮かびませんでした。「できるだけ早く、できることをやろう」という気持ちを持って対応するよう、職員にも伝えています。

豊頃町の基幹産業の未来

農業は堅調を維持しており、畑作・生乳・畜産いずれも良好で、今後も関係機関と相談しながら、基盤整備を中心に進めていく予定です。2021年、同じ十勝の帯広方面では干ばつで大変な思いをされていましたが、冷涼なここ豊頃は、おかげさまで影響はほとんど受けませんでした。地下水が高い位置にあり、畑に水が含まれていることから干ばつに強いのです。昔は畑作に不向きと言われた町南部でも、皆さんの努力により作物の収穫量が上がってきています。最新技術を取り入れながら効率の良い経営がなされていると思います。

農業機械は大型化が進み、GPS、自動操縦などIT技術の活用が盛んです。

漁業においての2021年は、赤潮被害により大きなダメージを受けた大変な年でした。大津はサケの水揚げが全体の8割を誇る漁港なのですが、この年はほとんど上がりませんでした。サケが獲れなければ働き手も減り、産業規模も縮小してしまいます。早期の解決に向け、大津の漁業関係者の方々を中心に、もちろん私も国や道に原因解明やサポートについて働きかけています。今後も継続していくためにも、新たな形を模索しながら、町としての支援を続けます。

地震や水害などに対する防災体制を強化します

豊頃町は十勝川が流れ込む最下流の町です。水資源が豊かな分、過去には水害に見舞われることもありましたし、大津地区には津波の脅威もあります。これまで行ってきた堤防のかさ上げやポンプ施設設置などのように、ハード面の対策は国や道と共に継続していきます。住民意識などのソフト面は、防災訓練や避難訓練を行って備え、若い世代とシニア世代が助け合える意識付けを、町が主体となって推し進めていきます。

2018年の台風被害では堤防の越水の危険があり、避難指示が発令。大きな地震や津波への備えも急がれます。

これからの豊頃町

小さな町だからこそ、隅々まで行き届くきめ細やかなサポートをしていきたいです。さらに、かつてないような選択をスピード感をもって決断できるのも小規模自治体の強みだと思っています。「町民にとっての住みよい町」、イコール「来訪者・移住者にとっても魅力ある町づくり」をしていきたいです。

また私自らが町外に出向いて、豊頃町のPRをしたいですね。子育て施策の充実により人口減少が抑えられており、基幹産業の農業が堅調な今こそ、外部に豊頃町の魅力を伝えるべきだと考えています。職員時代に培った経験をいかして、各課の出張にも同行し、先頭に立って宣伝していきたいです。首長が元気だと注目が集まるでしょう。出来ることをコツコツと堅実に続け、育て、自信をもって発信する。もっと豊頃町を知ってもらえるように努めます。

「きめ細やかに、大胆に、迅速に」。常にそうあり続けたいと思っています。

2020年に開町140年を迎えた豊頃町。中心部を流れる十勝川の河川敷に地上文字を施し、開町の歴史を祝いました。