365日、表情を変える「はるにれの木」を追って

十勝川の河川敷、旧利別川の河口にある「はるにれの木」。緑の平原の中に、美しく枝を広げています。周囲には何もありません。だからこそはるにれの木は圧倒的な存在感があります。

樹齢約150年、豊頃町の文化財に指定されています。実は2本の木が一体化した珍しい形をしています。恋人や夫婦が寄り添っているかのようにも見えるでしょう。

このはるにれの木は多くのカメラマンを虜にしてきました。太陽の位置や色、雲の動き。どの位置から撮影するか。季節によってもさまざまに趣を変えます。写真愛好家の浦島久さんは、お父様(故・浦島甲一さん)と2代にわたってはるにれの木を撮影してきました。父・甲一さんの死後、2009年から写真を撮り始めました。それから13年あまり。今もはるにれの木を撮るために豊頃に通い続けています。

浦島 久 さん

1952年豊頃町生まれ。帯広にて英語学校「ジョイ・イングリッシュ・アカデミー」を経営。写真家の父が中学校の英語教科書で取り上げられたことをきっかけに、2009年から十勝の風景写真を撮り始める。2016年からは豊頃町観光大使を務める。

はるにれの四季

はるにれの木 鑑賞注意事項

・はるにれの木は牧草地に立っています。通路以外の進入はご遠慮ください。

【春】

北海道の春は、あっという間に過ぎ去ります。春にはるにれを撮ることのできる期間はとても短いのです。残雪や霜、霧がかった朝方の美しいこと。難しさはあるけれど、少ないチャンスを逃さぬようシャッターを切り続けます。

【夏】

夏の朝はとにかく早い。4時前後の日の出に合わせて、帯広を出発するのは3時台。夏のはるにれは大変な分、達成感もひとしお。朝に限らず、午後の早い時間帯もおすすめ。真っ青な空と白い雲、強い日差しを受けつつ、草原の中に佇む瞬間も魅力的です。

【秋】

秋は日の出のときの太陽の位置が良い。10月初旬は真正面から太陽が昇るタイミングがあります。晴れているからいい写真が撮れるわけではなく、曇りの日も雨の日も、表情が変わります。だからはるにれは面白い。365日、いつ行っても楽しめます。

【冬】

ドラマチックな風景を撮影できるのは冬。星空から夜明けまでを撮影したいなら朝4時前に到着し、2時間かけて撮影を行います。日の出なら6時前。まっさらな雪原の日もあれば、冷え込んで凍った地面の日も。雪がしんしんと降る日も興味深いものです。

※写真提供:浦島 久さん
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