ELEZO社設立のきっかけ

代表の佐々木章太さんは帯広市出身。東京の有名フランス料理店で修業を積んだ後、23歳の時に十勝へUターン。2005年にELEZOを創業し、2009年、27歳の頃に豊頃町大津で株式会社ELEZO社(以下、ELEZO)を設立しました。

元々料理人としての道を歩んできた佐々木さんがジビエ料理(狩猟によって得た野生鳥獣の肉を使った料理)や食肉の業界へ足を踏み入れたきっかけは、十勝へ戻ってすぐの頃に出合った、おいしいシカ肉でした。

「今までに口にしたどの肉よりもおいしかった」。仕留めたばかりだというそのシカ肉のあまりのおいしさに驚いた佐々木さんは、これまでのお礼にとシカ肉を修業先の東京のレストランに送ります。すると、かつての師や仲間たちがそのシカ肉を大絶賛。これを発端に「肉の調達に協力して欲しい」との声がかかるようになったのです。

さらにもうひとつ、今の仕事を始める大きなきっかけとなったのが、「肉を屠(ほふ)る」という行為についたネガティブなイメージへの問題意識でした。食肉事業を始めるにあたり、業界についての知識を深めようとさまざまな文献を読み込む中で実感したのは、と畜場で働く人たちに対する感謝の薄さ。

「感謝されるはずの人たちが、逆にどこか下に見られている。そんな日本の現実を知ったんです」。と殺は肉料理をいただく上で必要な行為。誰かがやらなくては、肉が食卓にあがることはない。多くの人の生活を支える仕事だと言えるのに、なぜ感謝されていないのだろう。自らを「逆境に燃えるタイプ」だと分析する佐々木さん。「命から食材に転換する行為を自分がやらなくては」。そんな「ある種の使命感」を感じて始めたのが、肉の生産・狩猟から、熟成、流通、加工、調理までのすべてを自分たちで手がける食の一貫生産管理体制でした。

代表の佐々木章太さん。取材中、冗談を織り混ぜながら取材陣を笑わせてくれる、お茶目な一面も。

料理人である自分たちだからこそ、できること

ELEZO設立当時からのぶれない軸。それは、「料理人起点で食のAtoZ(はじめから終わりまで)を繋ぐ」という考え方。肉が口に入るまでの過程にあるさまざまなポイントを担うELEZO。一貫生産管理体制を整えることで、卸した肉の質に対するレストランの評価も、加工品や料理へかけられる消費者の「おいしい」の声も、直接聞くことができる。外に向けて、「これが自分たちの作った作品」と発信できるものを持つからこそ、やる意味があるのだと佐々木さんは話します。

料理人である自分たちが、命から食材へ転換する行為に立ち帰る。そうやって繋げていった先で、と畜場で働く人たちや食の根幹に携わる人たちに対する認識を少しでも良い方向へ持って行くことができたら。「ELEZOを始めたのは、そのためなんです。始まりも、今も、これからも」。静かに語るその言葉の裏側に、まっすぐな情熱を感じました。

ラボラトリー内にある熟成庫の様子。解体された肉がずらりと並びます。
ELEZO直営のレストランで提供される「蝦夷鹿のロースト」。

ジビエの経験がいきた家畜や家禽(かきん)の生産

2005年の創業当初は野生動物の狩猟による生産のみを扱っていましたが、2009年頃からは家畜や家禽の生産も行うように。

「ジビエは人の手が介在されない野生の世界で出来上がった食材。それを解き明かせば家畜や家禽が見えてくる」と、長年ジビエを扱ってきた経験をいかした飼育方法を実践しています。

生産をはじめた2009年は、種や月齢、性別、さらには環境やエサによる肉質の違いがジビエでの調理経験を積むうちに少しずつ理解できたタイミングだったのだそう。自然環境に委ねる放牧や平飼いを基本とするなど、限りなく野生に近い方法で飼育を行っています。

ELEZOは日本で初めて猟師を社員として雇用した会社でもあります。
敷地内にある広々とした放牧地。

豊頃町大津に拠点を構えるということ

豊頃町大津地区は、古くから漁業が盛んな地域。漁村とも言えるこの場所を、なぜELEZOの始まりの地としたのでしょう?その訳を聞くと、ニヤリと笑いながら「反骨心からですかね」と佐々木さんは答えます。

ここ大津は、十勝の開拓を夢見た多くの先人が入植し、今日の十勝の経済や文化発展の礎を組んだ場所。「反骨心」=「食の開拓をし直す」というELEZOの精神と「十勝発祥の地」である大津に、「はじまりの場所」という共通点を見つけたことが、この場所にラボラトリーを構えたひとつの理由でした。

2020年10月に増築したラボラトリー。落ち着いたブルーの色味がアクセント。

さらに、豊頃などの周辺地域に生息するエゾシカの肉の特性を理解していたこと、浜風に当たった家畜のエサには栄養が豊富に含まれており、それを食べて育った家畜の肉質が良くなることを知識として持っていたことも、重要な鍵となったようです。

地元の地域交流にも力を入れているELEZO。ときには、山のもの(肉)と海のもの(鮭)の物々交換も行われるのだそう。「何も特別なことではありません」と佐々木さん。気を遣い過ぎることなく、心地良い距離感で深められていく温かな交流が垣間見えました。

ELEZOが見据える未来

2020年10月には、ラボラトリーをこれまでの3倍の大きさに広げるなど、事業を徐々に拡大してきたELEZO。2022年の秋頃には、近くの岬に念願のオーベルジュをオープンする予定です。宿泊、滞在しながらレストランで食事をするスタイルのオーベルジュは、ELEZOの考えを料理を通じて直接消費者へ伝えるにふさわしい施設。ラボラトリーのある大津で直営の店をスタートさせることに大きな意義を感じているようでした。

さらには、「肉一片、血一滴も無駄にしない」という信念のもと、シカ皮を使ったアパレル製品を開発したり、肉の生産・狩猟から、熟成、流通、加工、調理までのすべてを手がけるELEZOの事業モデルを海外に展開することも視野に入れているのだと言います。「やりたいことしかない」。力強く放ったそのひと言が印象的でした。

豊頃・大津から日本、そして海外へ。ELEZOが行う料理人起点の取り組みはこれからも、歩みを止めることなく進んでいきます。

ELEZOのふるさと納税返礼品

ELEZO厳選シャルキュトリパーティーセット

ソーセージ、テリーヌ、ハム、煮込み料理の中から8種類をお届けします。

  • 蝦夷鹿のサルシッチャ(写真右)
    火を通さずに腸詰めをするサルシッチャ。焼き上げる直前まで腸内で熟成が進み、うま味と香りが増すことで、より肉々しくジューシーに。鹿肉の深い味わいが楽しめます。油をひいたフライパンでじっくりと熱を通して召し上がれ。
  • 蝦夷鹿サラミ(写真中央奥)
    赤身と良質な脂身のみに選別し、熟成させたサラミ。鹿肉に含まれる鉄分から生まれた上質なうま味をストレートに表現し、香り豊かに仕上げました。
  • 放牧豚のテリーヌ(写真左)
    一般的な豚の飼育期間よりも長い、1年半の歳月をかけて育てた豚のテリーヌ。うま味や香りが強い肉なので、嚙み応えを残しつつピスタチオの香りと食感をアクセントに加えました。そのままはもちろん、ピクルスやサラダと共に、前菜としても。